FACULTY OF SCIENCE AND ENGINEERING, GRADUATE SCHOOL OF ENGINEERING, IWATE UNIVERSITY

化学・生命理工学科 化学コース

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大容量リチウム二次電池に向けためっきの創製

材料基礎化学研究室呉松竹准教授が、Cu板上への鱗片状Sn-SnO2-TiO2/Cu6Sn5ハイブリッドめっきの開発に対して、日本銅学会第50回論文賞を受賞しました。

現在リチウムイオン二次電池(LIB)は、携帯電話やノートパソコン、電気自動車など幅広い分野で応用されていますが、HEV/EV車の推進とともに高エネルギー密度のLiイオン二次電池(LIB)電極材料の開発が求められています。従来のLIBの負極材料は、導電性の高い純銅箔上に炭素材料を活物質としてバインダーなどと混ぜて塗布したものが使用されているが、その充電容量が理論値(372 mAh/g)にほぼ達しているため、新しい高エネルギー密度活物質の開発および実用化が期待されています。スズ(Sn)金属は理論容量が994 mAh/gと高く、高容量LIBの負極材料として注目されています。


しかし、Sn電極材料は、充放電時のLiとの合金化による体積変化が4倍ほど大きく、電極の崩壊や集電体Cu板からの活物質脱落問題が存在します。そこで、本研究では、Sn系活物質を用いるLIB負極のサイクル特性を改善するために、応用電気化学の知識を活用して、電気めっきと泳動電着法を組み合わせたハイブリッドめっき法により、集電体のCu板上に鱗片状ナノ結晶を有するSn-SnO2-TiO2ポーラス層と緻密なCu6Sn5合金層からのSn-SnO2-TiO2/Cu6Sn5二層複合めっき膜を作製する技術を開発しました。


ここでは、体積変化が僅か4%のTiO2とSn金属を共析することによりナノ空間を有する鱗片状Sn-SnO2-TiO2複合めっきを形成させ、めっき層内部にLi-Sn合金化の体積変化を緩和させます。さらに、Cu基板とSnめっきの活物質層の間にCu-Sn合金層を形成させることで密着性の向上と体積変化の緩和を果たせます。この複雑のようなナノ構造を新規なハイブリッドめっき技術でOne-Processで集電体Cu基板上に直接に合成させることができました。
右図には、ハイブリッドめっき法によりCu基板上に形成された鱗片状Sn-SnO2-TiO2複合めっき膜の電子顕微鏡(FE-SEM)の表面写真を示しています。また、この複合めっき膜をバインダーおよび導電助剤フリーのLIB負極として定電流充放電試験した結果、過去にはない、現行の炭素材料より3倍以上の高い放電容量(1227 mAh/g)を示し、優れたサイクル特性を持つことが認められました。

この研究は、応用電気化学における機能性表面処理工学の専門知識を活用して新規なナノ材料の創製に成功した例です。また、このめっき技術は、現行のめっきラインをそのまま利用して低コストで大量生産できるため、次世代大容量Liイオン二次電池の負極電極材料の量産実用化への展開が大いに期待されます。


受賞タイトル:「大容量Li二次電池負極に向けたCu板上への鱗片状Sn-SnO2-TiO2/Cu6Sn5ハイブリッドめっきの創製」
論文:呉松竹, 三浦智史, 八代仁, 銅と銅合金, Vol.55, No.1, p.64-p.68, 2016.
受賞日:2016.10.29
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