FACULTY OF SCIENCE AND ENGINEERING, GRADUATE SCHOOL OF ENGINEERING, IWATE UNIVERSITY

化学・生命理工学科 化学コース

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医薬品開発に革新をもたらす脱レアメタル未来型触媒

有機精密合成化学研究室是永敏伸准教授のグループで開発された新規触媒による有機合成反応が、岩手日報で報道されました。また、この新規触媒は2017年春より東京化成工業(TCI)から試薬として販売が開始されました。

医薬品化合物の開発研究や工業合成には、ノーベル賞反応であるクロスカップリング反応を始め多様な触媒反応が用いられていますが、その触媒には希少で高価な遷移金属(レアメタル)を使用する必要があるため、その代替触媒の開発が求められています。また、空気酸化は理想的なクリーン反応ですが、大気中の酸素を効率的に有機合成に利用する事は難しく、世界中で研究が行われています。

今回是永准教授らは、有機分子のみから成る新規有機分子触媒がグリニャール試薬の酸化的ホモカップリング反応によるビアリール化合物合成に有効である事を見出し、希少な遷移金属触媒を代替する触媒の開発に成功しました。
   

さらに従来触媒では、反応の進行にグリニャール試薬と同量の共酸化剤を必要としたため、触媒は少量ですむのに共酸化剤は多量に必要という矛盾を抱えていました。それに対し、本触媒系では共酸化剤として空気中の酸素を利用するため省資源・少廃棄物という環境に優しい反応が実現できました。


生成物であるビアリール化合物は、医薬品や有機機能材料の基本骨格に含まれる構造であるため、今後、医薬品開発への利用が期待されます。また本触媒系を応用することで、希少金属触媒も共酸化剤も用いずに多様な有機化合物の空気酸化を行うという理想的反応の実現に向けて道が開けました。

本研究の成果は、本コースの有機機能化学研究室小川智教授村岡宏樹助教)との共同研究として、アメリカ化学会の学術雑誌に掲載されました。


新聞名と掲載日:岩手日報(2015.11.29)
見出し:レアメタル代替新触媒
掲載論文:Org. Lett. 2015, 17, 5500–5503.
企業から販売:
  製品名 1,2-Bis[2,3,5,6-tetrafluoro-4-(trifluoromethyl)phenyl]-3,3,4,4,5,5-hexafluoro-
      1-cyclopentene
  製品コード B5426

私が研究開発を行いました

 似鳥 馨 君 (盛岡第一高等学校 卒)
 大学院博士前期課程 応用化学・生命工学専攻
 有機精密合成化学研究室


この研究は、4年生の卒業研究で行いました。先生のご指導の下実験を重ね、新たな触媒を開発できた時には、大変興奮しました。自分が生み出した触媒が大手試薬メーカーから販売開始されたので、世の中にどう役立っていくのか大変楽しみです。


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