金属錯体触媒を用いた有機合成は医薬品合成に欠かせませんが、金属は高価であり将来的には枯渇する懸念があります。当研究室ではそうした金属錯体触媒を高活性化し使用量を低減化する事で安価で省資源的な触媒反応の確立を目指し、配位子と呼ばれる触媒を高活性化する化合物を開発しています。これまでにフッ素を導入したユニークな配位子を開発することで、世界最高レベルの触媒活性を示す金属錯体触媒の開発に成功し、その配位子は、大手試薬メーカーから販売が開始されました(Link)。
レアメタルの枯渇に対して、金属触媒を有機分子触媒に置き換える方法があります。有機分子触媒は21世紀に発展してきた新しい分野で当研究室でもその開発を行っています。当研究室で開発した新規パーフルオロシクロペンテン誘導体は、空気中でグリニャール試薬の酸化的ホモカップリング有機分子触媒として働き、2〜10
mol%の触媒量で効率的にビアリール生成物を与えることがわかり、環境調和型の新たなタイプの有機分子触媒を生み出すことに成功しました。この触媒は最近、大手試薬メーカーから販売が開始されました(Link)。
「創薬」においては、医薬品企業の膨大なノウハウの下、博士クラスの多数の研究員が10年以上の膨大な時間と数百億円の研究費を費やし数十万の化合物を精査して、やっと一つの新薬が生まれると言われています。従って大学の一研究室から新薬が生み出される可能性は極めて低いです。しかし、大学で高性能触媒を開発する事で、医薬品業界に大きく寄与することが出来ます。当研究室で開発した触媒を用いて、複数の医薬品や生理活性化合物を簡単に合成することに成功しており、これらの技術は医薬品業界からも注目されています。
触媒を開発するためには、触媒反応機構の正しい理解が必要となります。しかし反応を支配している”遷移状態”は実験で求めることができず、量子化学計算により初めて解析することが可能となります。当研究室ではこの難易度の高い触媒反応の遷移状態解析を実施し、自身で開発した触媒や、他大学で開発された触媒の反応機構の解析を行っています。最近では、理論計算による触媒設計も行い、医薬品合成中間体を効率的に合成できる触媒の開発にも成功しました(Link)。
・東北大学大学院理学研究科
・東北大学大学院薬学研究科
・京都大学化学研究所
・岡山大学大学院自然科学研究科
・熊本大学大学院生命科学研究部
・千歳科学技術大学理工学部
・関東化学株式会社
・三谷産業株式会社
・日本化学会
・日本化学会東北支部
・有機合成化学協会
・アメリカ化学会
・近畿化学協会 有機金属部会
・日本フッ素化学会