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是永敏伸

  

配位子の電子的制御に基づいた高活性金属錯体触媒の開発


金属触媒反応の選択性や触媒活性は、反応に直接参加しない、支持配位子により大きく左右されます。
配位子の強い電子効果による触媒制御を行うため、主にフッ素を有する電子不足なホスフィン配位子に着目しております。

不斉ジホスフィン配位子MeO-F12-BIPHEP

高度に電子不足なホスフィン配位子はドナー性の弱さから金属とあまり強い配位を形成できないため、これまで能力を発揮できずにいました。我々は、新たなデザインによる配位子開発と配位子としての機能開発を行うことで、高度に電子不足なホスフィン配位子が極めて有効である事を示しました。まず第一弾として、高度に電子不足な不斉配位子であるMeO-F12-BIPHEPを開発しました。
  
この不斉配位子を下に示すロジウム触媒による不斉1,4-付加反応に用いると、室温では一時間あたり750回転、100℃では一時間あたり最高53,000回転を記録しました。この値は、不斉炭素-炭素結合生成反応における世界最高レベルの触媒活性です。しかも生成物は、ほぼ光学的に純粋なものでありました。
さらにこの配位子を用いて触媒の超低減化を試みた所、わずか97μgのロジウム触媒から、27.9gの光学活性化合物を得る事ができました。これは、触媒が32万回も回転した事になります。
    
この新規配位子を有するロジウム触媒は、天然物化合物を用いた不斉1,4-付加反応にも有効であり、極めて少ない触媒量でも穏和な反応条件で短時間に光学的に純粋な生成物を与えます。生理活性物質等の有用光学活性化合物の効率的合成にも利用できます。
   

これら優れた配位子効果を示すMeO-F12-BIPHEPは関東化学(株)より発売が開始されました(Link)。

論文発表
1) Korenaga, T.; Osaki, K.; Maenishi, R.; Sakai, T. Org. Lett. 2009, 11, 2325. [IF=6.364]
2) Korenaga, T.; Maenishi, R.; Osaki, K.; Sakai, T. Heterocycles 2010, 80, 157. [IF=1.077]
3) Korenaga, T.; Maenishi, R.; Hayashi, K.; Sakai, T. Adv. Synth. Catal. 2010, 352, 3247.[IF=5.535]
4) Korenaga, T.; Hayashi, K.; Akaki, Y.; Maenishi, R.; Sakai, T. Org. Lett. 2011, 13, 2022. [IF=6.364]
5) Korenaga, T.; Ko, A.; Shimada, K. J. Org. Chem. 2013, 78, 9975. [IF=4.564]

特許
1) 是永 敏伸, 酒井貴志, 大崎和隆 特願2009-17385, 特開2010-173958.

アリールホスフィン中最大級に電子不足なBFPyホスフィン配位子

アリールホスフィンの中で最も電子不足な配位子としてP(C6F5)3が古くから知られていましたが、この配位子はドナー性が弱いだけでなく、リンのオルト位にあるフッ素の大きな立体障害のため非常に金属と配位しにくい配位子でした。今回、この電子不足でありながらPPh3と同程度の嵩高さしか持たない、BFPyホスフィン配位子を開発しました。
        
不斉BFPyホスフィン配位子はロジウム触媒によるイミンへの不斉1,2-付加を大きく加速させることがわかりました。従来この種の反応では1〜3 mol%程度の触媒を必要としましたが、 MeO-BIPHEP型BFPyホスフィン配位子はわずか0.008 mol%の触媒量でも反応が可能であり、一時間あたり一万回も回転することがわかりました。これは従来触媒の数百倍の触媒活性となります。
  
またアキラルなBFPyホスフィン配位子は、パラジウム触媒による直接的アリール化に有効であることがわかりました。直接的アリール化は、ノーベル賞反応であるクロスカップリングの次世代型の反応の一つと言われていますが、従来報告されている触媒活性は高いものではありませんでした。新たに開発したBFPy-Sphos配位子を有するパラジウム触媒は、特に反応しにくいチオフェン類への直接的アリール化反応に対しても、1 mol%の使用量で円滑に反応が進行し、今後の高活性化への展望が開けました。
    

論文発表
1) Korenaga, T.; Ko, A.; Uotani, K.; Tanaka, Y.; Sakai, T. Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 10703. [IF=13.743]
2) Korenaga, T.; Suzuki, N.; Sueda, M.; Shimada, K. J. Organomet. Chem. 2015, 780, 63. [IF=2.109]
3) Korenaga, T.; Sasaki, R.; Shimada, K. Dalton Trans. 2015, in press. [IF=4.197]

特許
1) 是永 敏伸, 酒井貴志, コアラム 特願 2011-031853.



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Korenaga's Personal Page


岩手大学 工学部応用化学・生命工学科
 有機合成化学研究室
  触媒反応グループ
准教授 是永 敏伸
〒020-8551
岩手県盛岡市上田4-3-5

Toshinobu KORENAGA, Ph. D.
Associate Professor
Department of Chemistry and Bioengineering
Faculty of Engineering
Iwate University
4-3-5 Ueda, Morioka, Iwate 020-8551, Japan