東北ポリマー懇話会

大学・高専・研究機関のご紹介

各研究室の活動状況をお知らせします。

弘前大学 理工学部物質理工学科(物質創成化学科)

〜須藤研究室〜

 学部学生が4名で()ニチロとの受託研究で魚を出発原料とする高分子の複合化に関する研究と漆の複合化に関する研究を行なっている。


弘前大学 理工学部物質理工学科(物質創成化学科)

澤田研究室

ーフッ素系機能性材料の開発とその機能の解明に関する研究ー

1.研究について

 高分子界面活性剤は低分子界面活性剤に比べ乳化力が高く,さらには分散能や凝集力に優れ毒性が少ないものが多いため注目されています。しかしながら,低分子界面活性剤に比べ表面張力,界面張力の低下能は低く,ミセルに相当する分子集合体を形成し難い等の問題点があります。このため,これら高分子界面活性剤に長鎖のフルオロアルキル基を導入させることは,フッ素の優れた界面活性な機能を付与させる点から興味深検討項目であります。実際,長鎖のフルオロアルキル基が高分子化合物中に導入された化合物が今までに数多く合成されてきています。一般に,これらフルオロアルキル基含有高分子化合物はフルオロアルキル基がエステル結合等を介してランダムに,もしくはブロック的に導入されているためフルオロアルキル基はこのエステル結合により加水分解を受けやすく,フッ素に起因した高い界面活性な機能を長期に渡り発現し難い等の問題点を有していました。しかしながら,我々の研究室で最近開発されたフルオロアルキル基が高分子末端のみに直接炭素−炭素結合で導入された新規な化合物は,興味深いことに,フルオロアルキル基がランダムもしくはブロック的にエステル結合等を介して導入された従来の高分子化合物には見られない極めて数多くのユニークな性質,例えば水さらには有機溶媒に対して極めて高い溶解性を示し,フッ素に起因した高い界面活性な機能をも従来の低分子フッ素系界面活性剤と同等もしくはそれ以上に示すことを見いだしました。特に注目に値する点は,これら新規に見いだされたフッ素系高分子化合物におけるフルオロアルキル基は互いに凝集しやすい性質をフッ素系高分子化合物において初めて見いだした点であります。現在では,これら新しいタイプのフッ素系高分子化合物の開発とそのユニークな機能の解明に関する研究を積極的に展開しております。なお,これらの研究成果に対して高分子学会から高分子学会三菱化学賞を受賞しております。 

2.1年間の研究活動について

 研究室の1年間の研究活動について,特に新しく配属される学部4年生について簡単に紹介します。

 学部4年生は4月に入り正式に研究室に配属されてから,約1ヶ月間研究室の先輩学生より,実験装置の取扱方法,実験方法さらには研究の内容等について詳細にかつ具体的な指導を受けます。このときには,A4 1枚程度の研修レポートを毎日提出させます。これを後で読みますと先輩学生達の指導内容や学生の個性等が読み取れ,後日この内容を指導学生にフィードバックさせております。5月の連休明けに,正式な研究テーマが与えられてから卒業研究がスタートします。研究室では週に一回のペースで自分の研究に関連する論文の紹介とフッ素系高分子化合物の合成に関する英語の専門書の輪読をそれぞれ2名が担当して行っております。また,研究の進捗状況をチェックするため,2ヶ月に一回のペースで研究中間発表会を行っております。4年生は1年間の研究成果を学内の卒業研究発表会で発表する以外に,必ず翌年の3月末に開催される日本化学会春季年会さらには翌年5月に開催される高分子学会年次大会で全員が発表することをモットーに指導を行っております。大学院の学生においては,これらの学会での研究発表以外に国内で毎年開催されるフッ素化学討論会,高分子討論会,高分子学会東北支部研究発表会,材料技術研究協会討論会等で研究成果を発表し,さらにはチャンスがあれば海外で発表できるよう指導を行っております。


八戸工業高等専門学校 物質工学科

野沢研究室

1.専門分野

 高分子合成を専門として,大学で9年,企業で23年,高分子材料領域の研究開発に携わってきました。原点は東北大学工学部山口研究室におけるアニオン重合による“星型・ブロックポリマー”の合成です。以来ラジカル塊状重合によるスチレン系樹脂の製造,さらに重縮合による機能性樹脂合成,帯電防止性・難燃性等を付与した樹脂組成物の開発・製造,そして最近まで取り組んでいた光学用途の樹脂開発に至るまで,素材樹脂の製造から成形加工による部材形成まで広範囲に及ぶ材料開発に係わってきました。

2.研究課題

 21世紀は“光”をキーワードとして材料,技術が展開すると予測されています。これを踏まえ,光関連分野を志向したポリマー合成,複合材料合成を研究のフィールドとしました。初年度研究課題としては,「芳香族ビニルモノマーのリビングラジカル重合による多分岐高分子の合成」を設定しました。まだ先行研究をなぞる段階ではありますが今後の手がかりが得られたかと思っております。

3.研究概要

 光関連材料は,光に対する応答に着目して分類し用途を紹介すると次のようになります。

    応答             用途例

   光を通す:       レンズ,プリズム,ファイバー,光導波路,各種フィルム

   光を発する:      半導体レーザ,発光ダイオード,有機EL

   光照射により変化する: 光硬化樹脂,フォトレジスト,受光素子,光センサー,太陽電池

   光子を操作する:    ナノフォトニクス,フォトリフラクティブ,フォトニック結晶

 まず光の通り道としての樹脂材料開発に取り組んでおります。出口感は,「熱可塑性高屈折率,低複屈折樹脂系材料の開発」であり,技術要素・切り口は,樹脂そのものの構造設計および(あるいは)光学的異方性をもつ無機ナノ粒子との複合系設計にあります。「芳香族ビニルモノマーのリビングラジカル重合による多分岐高分子の合成」においては,第一ステップとして樹脂設計の指針を明確にすることに着手しました。着想は,多様な分岐様式という一次構造制御により,コンフォメーションを制御し複屈折を低減しようとするもので,合成手法として,リビングラジカル重合を取り上げました。 

物質工学科は無機機能材料分野,超臨界を基盤とする工学分野の研究領域において頼もしい陣容を備えています。ナノをキーワードに無機・有機・工学の連携によって研究領域を拓きたいと考え模索中でもあります。


秋田大学 工学資源学部環境応用化学科

寺境研究室

 

有機化学、高分子化学を基盤とした新規化合物の合成や機能解析、新規機能性有機材料の創成などを行っています。分子レベルで機能発現をデザインし、実際に合成を行い、構造解析・機能評価を行います。教職員は寺境光俊(教授)、松本和也(助教),山谷孝裕(技術職員)の3名です。

現在行っている研究テーマ

(1)分岐構造を導入した高分子の合成と機能評価
(2)生分解性高分子の合成と医療分野への応用
(3)炭化水素系新規燃料電池用電解質膜の開発
(4)一次構造を制御した新規縮合系高分子の合成と機能化
(5)カーボンナノチューブの可溶化と高度利用

主要研究設備:光散乱GPC装置,核磁気共鳴分光計(500MHz),MALDI-TOF質量分析計,熱分析装置(DSC, TG/DTA),原子間力顕微鏡,レーザー顕微鏡,走査型電子顕微鏡,透過型電子顕微鏡,X線光電子分光計,紫外可視分光光度計,超臨界二酸化炭素反応装置

Homepage: http://www.gipc.akita-u.ac.jp/~mjikei/index.html

岩手大学 工学部応用化学・生命工学科

大石・芝崎研究室

 応用化学・生命工学科の展開化学大講座に属する機能性高分子化学研究室である。大石好行(教授),芝崎祐二(准教授)の2名の教員と博士後期課程2名(社会人ドクター),博士前期課程10名,学部4年生10名から構成されている。研究は主として,重縮合・重付加による機能性高分子材料の開発が中心となっており,次のように大別できる。

()トリアジン環を有する機能性高分子材料の開発:本研究では,種々の機能団を有するトリアジン系モノマーが機能性モノマーであることに着目しこれらの機能性トリアジン系モノマーを用いることにより,機能性高分子材料の新たな分子設計法と合成法を確立した。この方法を応用して,イオン伝導性高分子電解質,プロトン伝導性高分子電解質,酸素応答性樹脂および撥水性フッ素樹脂などを開発している。

()シリル化法による機能性縮合系高分子の合成に関する研究:本研究では,シリル化されたモノマーがケイ素原子に基づく特異な反応性を有することに着目して,シリル化モノマーを用いる縮合系高分子の新規な合成法を確立し,新しい機能性高分子の合成を行っている。このシリル化法を応用することにより,低屈折率高分子,低誘電率高分子,疎水性エポキシ樹脂および有機-無機ハイブリッドなどを合成している。

()磁場配向を利用した高分子配向フィルムの作製技術:高分子の配向フィルムは,液晶ディスプレイ用の液晶配向膜や複屈折膜などとして広く使用されている。当研究室では,液晶材料の磁場配向特性を利用して,光硬化性液晶材料を磁場配向させてから光硬化させることにより,高分子配向フィルムを作製する新しい技術を開発している。

()縮合系高分子の精密設計とそのブロック共重合体の新規相分離構造材料の開発:本研究では,付加重合のリビング重合技術で得られるような精密設計が縮合系モノマーでも可能であることを利用して,様々な“かたち”の縮合系高分子の合成を目指している。さらに,この精密に設計されたポリマーが発現するミクロ相分離構造の解明と材料への展開を研究している。

()高性能エンジニアリングプラスチック(エンプラ)の開発:エンジニアリングプラスチック(エンプラ)は特殊用途の耐熱性,高強度・高弾性率材料である。現在知られている5大エンプラは,ポリアミドPA(タイヤコード),ポリエステルPET,PBT(電気絶縁体),ポリカーボネートPC(光磁気ディスク),ポリアセタールPOM(キャスター),ポリフェニレンエーテルPPE(電気機器のアダプター)である。これらの汎用エンプラよりさらに優れた性能を有するエンプラはスーパーエンプラと呼ばれている。本研究では,汎用エンプラの様々な化学構造の設計や解析から,新規なスーパーエンプラの開発を行っている。

◆主な研究設備:ホットプレス機,引張り試験機,偏光顕微鏡,膜厚計,接触角測定装置,GPC,熱分析装置,元素分析装置,蛍光分光光度計,IR分光光度計,UV-可視分光光度計,UV照射装置,アッベ屈折計など。


山形大学 大学院理工学研究科

城戸・中山・夫研究室

 城戸淳二教授,中山健一准教授,夫勇進助教の3名が教員である。

本研究室では有機ELや有機トランジスタを始めとする有機半導体デバイスの研究を行っています。有機蛍光色素や金属錯体,半導体高分子材料の設計,合成からデバイス化,そして製造プロセスに至るまで幅広い研究を行っています。現在,三十名近い学生が所属しています。地方大学にもかかわらず修士以上には多くの他大学出身の学生が在籍しているのが特徴的で,有機ELの研究をするために山形大に進学して来ます。最近では,高校生が城戸研究室を希望して大学を受験するようにもなりました。他にも共同研究企業からの派遣研究員が数名と,外国からのポスドクが数名在籍しています。

 プロジェクト関連では,14年度から始まった経済産業省「高効率有機デバイスの開発」プロジェクトの研究総括責任者を務め,研究室にはプロジェクト参加企業からの出向研究員やポスドク計10名が滞在しています。また,15年度には東北経済産業局から地域新生コンソーシアム事業による「プリンタブル有機EL素子の開発」を委託され,参加企業2社とともにプロジェクトに取り組みました。16年度からはあらたにNEDOの委託研究である「照明用高効率白色有機EL」プロジェクトも数社の企業とともに開始しました。

 以上,研究室には40名を越える学生,研究者が所属しており,国内外で最大の有機ELの研究室です。

◆主な研究設備:所有する装置としては,合成実験に必要なドラフトや実験台と,UV-VIS,蛍光,*FT-IRHPLCGPCなどの分析装置類,材料物性評価用のポテンシオスタット,光電子分光装置,TOFキャリア移動度測定装置,ストリークカメラ,蛍光量子収量測定用積分球など,有機EL素子作製に必要な真空蒸着機やスパッタ装置,グローブボックス,素子封止装置,塗布装置類など,素子特性評価に必要な半導体パラメーター測定装置など各種測定装置,薄膜観察に必要なFE-SEMAFM,X線回折等,を有しております。


山形大学 大学院理工学研究科

岡田研究室

 当研究室は,工学部機能高分子工学科,大学院理工学研究科博士前期課程の機能高分子工学専攻,後期課程の物質生産工学専攻の担当となっており,平成19年度は,博士後期課程1名,前期課程3名,4年生5名,後期から配属の3年生5名の学生と,有機結晶に関わる研究に取り組んできた。一般に有機結晶中では,構成する分子間には,ポリマー中での共有結合のように強い結びつきは無いが,様々な弱い力を介した相互作用がある。したがって,拡張した捉え方をすると,結晶は一種のポリマーと見なすこともできる。当研究室では,有機結晶自身の合成と,重合を含む結晶中で分子の反応について,有機結晶のデバイス化をも視野に入れつつ,以下のような検討を行っている。

(1)ブタジイン誘導体結晶の固相重合を基盤とする新規共役系の構築と物性評価

(2)芳香族系イオン性共役分子の極性結晶化と二次非線形光学特性評価

(3)ナノスケール固相重合と外部試薬の攻撃による結晶の重合反応 等


山形大学 大学院理工学研究科生体センシング機能工学専攻

倉本研究室

 倉本研究室は大学院理工学研究科生体センシング機能工学専攻の機能センサー工学講座に属して導電性高分子・生体模倣化学・機能性材料を研究対象にしています。特に導電性高分子であるポリアニリンの加工性向上と電子・電気・機械分野への応用について研究しています。ポリアニリンは最初に二次電池の正極材料として実用化された導電性高分子ですが,さらに加工性向上により応用の拡大を目指しており,特に帯電防止材料や太陽電池電極材料などへの応用に取り組んでいます。

 また研究室として国際交流にも力を入れており,中国科学院化学研究所所長の方世壁先生や江英彦先生の研究室と研究交流してきましたが,いままでに中国科学院科学研究所と姉妹校協定を結んで3人の博士留学生を受け入れて来ました。またマレーシア工科大学のRamli Hitam教授の研究室ともポリアニリンの導電率向上に関して研究交流を行っています。

[最近の研究テーマ」

()ポリアニリンの加工性向上:アニオン性界面活性剤存在下で重合したポリアニリンを種々の高分子と有機溶媒中で複合して導電性を付与し,導電性高分子の応用の拡大を目指しています。帯電防止材料,二次電池の正極材料,防錆塗料,電磁波シールド材としての応用を考えています。山梨県の包装会社「マルアイ」は平成10年度から我々の特許技術に注目して開発研究を始めて実用化して帯電防止材料として商品化しており,電子部品を静電気障害から守るための帯電防止材料(商品名SCS-NEO)として商品化されています。

()ポリアニリンの電磁波吸収特性に関する研究:RFIDタグ用アンテナ材料としての応用を目指して「非接触ICタグ製造を目的とした新規有機導電材料の研究開発」とした研究題目で研究開発を行ってきました。非接触ICタグは別名RFID(Radio-Frequency IDentification)タグとして無線通信による認識技術として知られており,身近な例ではJR東日本の定期券で使われているスイカカードがRFIDタグです。ポリアニリンを用いて導電性インクを作成し,印刷型でアンテナ部分を形成できれば,より簡便にRFIDタグを製作することが可能となります。ポリアニリンのさらなる導電性向上に関して取り組んで,高感度なアンテナ機能を有する印刷型の導電性インクの作成を行うつもりです。

()二酸化チタンとポリアニリン電極による湿式太陽電池:光合成をモデルにした人工光合成の系に湿式太陽電池があります。スイスローザンヌ連邦工科大学のGrazel教授によって開発され,1992年のNatureに人工光合成型太陽電池として取り上げられて一躍注目されました。p-型半導体の導電性高分子を対極にして湿式太陽電池を構成した人工光合成系を研究しています。ポリアニリンを導電性ガラス上に膜形成して電極として用い,対極としてコロイド溶液から調整し,焼成した透明性の良い二酸化チタンを用いて,ポリアニリンと二酸化チタンを固体または液体の酸化還元性の電解質を隔てて光を照射する事により湿式太陽電池を構成して光-電流変換について評価しています。

 またフラーレン誘導体と導電性高分子との組み合わせによる新規な機能を目指して取り組みを行っています。これらの研究について「はじめての導電性高分子」出版社・工業調査会に紹介しており,ホームページ上(URL:http://cmk.yz.yamagata-u.ac.jp)でも公開しています。


山形大学 大学院理工学研究科生体センシング機能工学専攻

〜佐藤研究室〜

 生体センシング機能工学専攻は生体計測科学,機能センサー工学,機能材料計測学,生体機械情報学の4つの講座からなり,そのうち佐藤研究室は,機能センサー工学講座に属している。主に機能性高分子の合成やリビングラジカル重合による精密合成,新しいセンサー材料の開発を研究している。

[最近の研究テーマ]

()活性酸素検出剤の開発:近年,発ガンや老化の原因とされる生体内における酸素中心ラジカル(活性酸素)の作用が問題となっている。ところが,これらは寿命が短く,直接観測することは困難な場合が多い。そこで,これら活性酸素を調べるための検出材料の開発を行っている。

()新しいリビングラジカル重合法の開発:ニトロ,ニトロンあるいはニトロソ化合物と各種ラジカル種との反応で生成する新規アミノエーテル化合物は,リビングラジカル重合の開始剤となりうる。そこで,これらを用いて設計通りの分子量や分子構造を有し分子量分布の狭いポリマーの合成を試みている。

()新しい熱解離性ポリマー合成に関する研究:TEMPOに代表される安定ラジカルは,各種ラジカル種との付加により加熱により可逆的に解離するアミノエーテル結合を生成する。そこで,ポリマー側鎖にTEMPO構造を導入し,それらを架橋点とする新しい熱解離性ポリマーの合成とその性質の検討を行っている。

()アダマンタン構造を持つ新規ポリマーの合成:アダマンタン構造を主鎖あるいは側鎖に持つ新しいポリマーを合成しそれらの電子材料や抗菌材料としての検討を行っている。

()新しい感熱材料の合成と応用に関する研究:ポリビニルアルコール(PVA)は生体適合性材料として,また,ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)は感熱材料として,さらには,TEMPOは電子移動触媒やスピンラベル材として知られている。そこで本研究ではPVA-PNIPAM-TEMPOを組み合わせた新しい高分子化合物を合成し,これらをドラッグデリバリーシステムやミクロ反応場に用いる検討を行っている。



山形大学 大学院理工学研究科
                   〜森・中林研究室〜

当研究室は、森秀晴(教授)、中林千浩(助教)の2名の教員と博士課程前期9名、学部生13名から構成されている。「高分子の機能化」に重点を置き、光・電子機能や生体適合性、自己組織化による高次構造形成といった付加価値を持った新規高分子の設計から合成、特性解析を行っている。現在取り組んでいる主な研究テーマは次のように大別できる。
①アミノ酸を有する高分子の精密重合と自己組織化によるナノ構造体の構築:本研究では、タンパク質やDNAを構成するアミノ酸の特異的な機能と自己組織化に着目し、RAFT系リビングラジカル重合法を用いたアミノ酸系高分子の精密重合、ナノ構造体の構築、及び分子デバイスへの応用を行っている。
②イオン液体部位を有するモノマーの精密重合:イオン液体は不揮発性、難燃性に加え、イオン伝導性を示すことから、近年燃料電池などの電解質材料としての利用が期待されている。本研究では、イオン液体部位を有するモノマーの精密重合法の確立や相分離挙動、電解質膜への応用について検討を行っている。
③機能性シルセスキオキサン微粒子を基盤とした有機・無機ハイブリッド材料の開発:多官能性かご型シルセスキオキサン「(R-SiO1.5)n」は、低屈折、低誘電率などの特性を持ち、光学・エレクトロニクス機能性材料への利用が期待されているケイ素系化合物である。本研究では、これを基盤とした有機・無機ハイブリッド材料の開発と様々な機能化について検討を行っている。
④有機デバイス向け新規有機半導体材料の開発:近年、有機半導体材料開発は盛んであるが、ポリチオフェン等に代表されるドナー性材料とは対照的に、アクセプター性材料の開発は立ち遅ており、汎用的な材料はフラーレン誘導体PCMBのみである。本研究では、アクセプター性新規有機半導体材料の開発と、それらを基盤としたフラーレンに依存しない有機薄膜太陽電池の創製に取り組んでいる。
東北大学 大学院工学研究科バイオ工学専攻

正田研究室

 機能高分子化学分野はバイオ工学専攻の生体分子化学講座に属しており、現在正田晋一郎(教授)、小林厚志(助教)、野口真人(助教)が職員として在籍している。
 本研究室では「巨大分子」が最も高次元の機能を有するという認識に立ち、それらの設計・合成に関し、反応(Reaction)と物質(Material)の両面から基礎研究を行っており、特に最近では糖鎖工学(Glycotechnology)および糖鎖生物学(Glycobiology)における新しい基盤技術の開発に重点を置いている。
 (1) 機能性材料としての多糖・オリゴ糖の高選択的合成法の開発:通常の方法では合成不可能な天然型あるいは非天然型多糖・オリゴ糖を高選択的に与える手法を開発することにより、従来持っている機能に加えて予想もつかない新しい機能性多糖が生み出される可能性がある。糖加水分解酵素を用いることにより非生合成経路による非天然型多糖オリゴ糖等の合成法を開発している。
 (2) 重合場における高次構造の制御:反応の位置・立体選択性に加え、高次構造の制御(空間選択性)が、材料の物性を支配する極めて大きな要素である点に着目し、高分子が生成する反応場において高次構造を制御する新しい方法論を開発している。
 (3) 低環境負荷機能性多糖(Glyco-Chemistry Cycles):低環境負荷高分子を構築、リサイクルする考え方を提唱している。これまでの高分子工業における天然多糖の化学修飾という考え方を脱却し、生体触媒に立脚したGlyco-Chemistry Cyclesという新しいコンセプトを提示し実践している。
(4) ナノバイオマテリアル創出を指向した生体触媒反応設計:酵素的グリコシル化のための保護基を全く用いない新規活性化糖ドナーの開発、糖転移能を有する加水分解酵素の超高感度スクリーニング法(Fluoride Ion Detecting Enzyme Screening: FIDES)の開発、酵素的グリコシル化反応を用いたネオグライコマテリアルの調製、ならびに新規グライコマテリアル創出のための高分子修飾反応を触媒する酵素のスクリーニングおよび合理的デザインを行っている。
 (5) 酵素触媒高分子反応の開拓:天然のタンパク質を酵素触媒により、配糖化することによる糖タンパク質の新規合成技術の開発を行っている。
◆主要研究設備:HPLC(5台)、FPLC(1台)、HPAEC(1台)、凍結乾燥機、遠心エバポレータ、滅菌器、クリーンベンチ、サーマルサイクラー、遠心分離機、クロマトチャンバー、インキュベータ、紫外・可視分光器など。


東北大学 多元物質科学研究所

栗原研究室

 当研究所の多元ナノ材料研究センターのハイブリッドナノ界面研究部の担当であり,現在,栗原和枝(教授),水上雅史(助手),佐久間博(助手)の3名に博士研究員2名,技術補佐員2名のスタッフと,学生は大学院博士課程2名,修士課程5名,4年生2名の計9名です。

 当研究室では,表面力測定を中心手段として,分子・表面間相互作用を明らかにするとともに,“力”を観察量とする界面や複雑系の新しい研究手法を確立したいと考え研究を行っています。

 表面力測定とは,2つの表面間の相互作用力の距離依存性をバネばかりの原理で精密に(分解能,距離0.1 nm,力10 nN)測定するもので,相互作用の起源や,表面のナノ物性の解明に有力な手段です。

 未来の技術を指向し,様々な領域でナノ工学の開発がはじまっています。材料や化学プロセスにおける微細化・精密化には,分子間・表面間の相互作用や界面の特性の理解・制御は欠かすことができません。それにより,初めて物質の特性を究極まで生かした材料創製や,微小空間での最適なプロセス設計が可能となります。また,構造と相互作用の解明は一般に物理・化学の基礎の課題のひとつでもあります。当研究室では,従来粒子の分散特性の評価に主に利用されていた表面力測定を,材料設計や生命科学に重要な対象に適用する新しい展開をめざしています。以下に,主な研究内容について紹介します。

()生体分子間相互作用の直接測定,発現機構の解明:

   課題: どこまで相互作用の特異性を識別出来るか?

 ・タンパク質-DNA間,およびタンパク質間の相互作用直接測定

 ・酵素反応の素反応の解析

()複雑な系の物性評価:

   課題: 分子1個の固さを測定出来るか?

 ・高分子電解質,ポリペプチドのブラシ層の構造と力学物性

()-液界面における液体のナノ構造形成評価:

   課題: -液界面における液体の分子論の構築

 ・固-液界面に水素結合により形成される分子マクロクラスターの研究

 ・ナノ共振ずり測定による限定空間における液体の特性評価

()装置開発

 ・ナノレオロジーおよびナノトライボロジー装置開発

 表面に平行なずり応力を測定する自作の装置を用い,新しく開発した共振測定法により,液体薄膜のレオロジー挙動を評価しています。ノイズに強く,また数値解析が容易であると同時に,液体の秩序化を大きな信号の変化として簡単に測定できるという特色があります。装置の改良,ならびに解析モデルの開発も行っています。

◆研究設備:表面力測定装置:ANUTECHMark 4,表面力測定装置:日本レーザ電子(株)NL-SF00,単分子膜製造装置:ユーエスアイシステムFSD50,原子間力顕微鏡:セイコー電子SPI3700,フーリエ変換赤外分光光度計:パーキンエルマ−2000,表面力・ナノレオロジー同時測定装置,その他,表面ならびに界面の評価装置


東北大学 多元物質科学研究所

及川研究室

 本研究所の高分子・ハイブリッド材料研究センター(有機ハイブリッドナノ結晶材料研究分野)に属し、及川英俊 教授、笠井 均 准教授、小野寺恒信 助教、石森和美 秘書、大学院博士後期課程3名、博士前期課程4名の計11名が在籍している。
 次世代フォトニック材料を目指した有機-無機ハイブリッドナノ結晶の創成とその集積化ナノ構造体制御が研究室の大きな研究目的・目標である。共役系有機・高分子物質と無機系物質(金属・半導体など)とのハイブリッドナノ材料では、サイズ・形状、内部構造、構成要素の組み合わせに強く依存した特異な光・電子物性や反応性、新規機能が期待される。当研究分野では、次世代フォトニクス材料を目指した様々なタイプのコア-シェル型ハイブリッドナノ結晶材料の創成とその集積化ナノ構造体制御のために、有機・高分子ナノ結晶作製法の開発、有機-無機ヘテロナノ界面の設計・構築、集積・階層化手法の確立、光・電子物性機能の評価を行っている。さらに、表面プラズモン励起反応の検証、フォトクロミックナノ結晶、逆オパール構造構築も展開中である。
(1)ハイブリッド化へ向けた有機・高分子および錯体ナノ結晶の高度な作製基盤技術の確立と基礎物性評価
(2)コアーシェル型ハイブリッドナノ結晶の創製と非線形光学特性
(3)高機能光材料創出へ向けた集積化プロセスの構築
(4)多孔質および逆オパール型細孔高分子薄膜の作製と光・電子物性
(5)生理活性物質のナノ結晶化と薬理応用
◆主な研究設備:走査型電子顕微鏡、走査型プローブ顕微鏡、多波長型共焦点レーザー顕微鏡、偏光顕微鏡、瞬間マルチ測光システム、(波長可変型)動的光散乱光度計、熱重量分析装置、粉末法X線回折装置、真空蒸着機、蛍光分光光度計、UV-VIS-NIR分光光度計、顕微FT-IR分光光度計、ゼータ電位計、回転粘度計、有機薄膜自動累積装置、昇華精製装置、熱電特性解析システム 他
Homepage:
http://www.tagen.tohoku.ac.jp/modules/laboratory/index.php?laboid=35


東北大学多元研物質科学研究所

                  〜宮下研究室

当研究室(http://www.tagen.tohoku.ac.jp/labo/miyashita/index-j.html)では高分子・生体分子・ナノ粒子・ナノ結晶など多様な有機,無機ナノ物質をそれぞれの機能分担に従い,ナノレベルで自在集積・組織化した新しいハイブリッドナノ材料の開発を目指している。主にLangmuir-Blodgett(LB)法により作製される高分子ナノシートを基盤物質として用い,種々のナノ物質を階層的に組織化してナノレベルでハイブリッド融合する。このような多元ナノ材料を用いてデバイス化するナノ領域における基盤技術,および「ボトムアップ型ナノテクノロジー」の発展を目指した新素材の研究開発を行っている。
(1)ラングミュアー・ブロジェット法によるナノソフトポリマーマテリアルの創製
(2)光・電子機能性高分子ナノ組織体のデバイス化
(3)光誘起電子移動やエネルギー移動を利用した分子センサ・ナノフォトニクスデバイス開発
(4)反応性高分子ナノシートによる自己支持性高分子ナノシートの自在構築
(5)有機/無機ハイブリッドナノ組織体の構築
(6)液液界面を利用したナノ材料の集積化
(7)シルセスキオキサン系材料によるフィルムエレクトロニクスデバイスの開発


 東北大学 多元物質科学研究所
 有機・生命科学研究部門 生命機能制御物質化学研究分野 
和田健彦研究室

和田 健彦教授 / Takehiko WADA, PhD, Professor
荒木 保幸助教 / Yasuyuki ARAKI, PhD, Assistant Professor
坂本 清志助教 / Seiji SAKAMOTO, PhD, Assistant Professor

HP:http://www.tagen.tohoku.ac.jp/labo/wada/index-j.html
E-Mail :hiko@tagen.tohoku.ac.jp 

日本語専門分野・キーワード:
生命化学・遺伝子治療・外部刺激応答型機能分子・構造変化高感度高時間分解能検出

Specialized Fields・Key Words:
Biomolecular Chemistry・Gene Therapeutic Oligonucleotide・External Function Controllable Material・CD Measurement System with High Sensitivity and High Time Resolution

日本語タイトル:
生命機能の外部刺激制御法の開発と構造‐機能相関の高時空間分解検出(32字)

日本語紹介文:
当研究室では、DNAやRNAなどの核酸、そしてタンパク質など生体高分子の、次世代インテリジェント型ナノバイオ機能材料への応用を目指し、論理的設計・合成・機能物性の物理化学的手法を活用した評価を中心に研究を行っています。例えば、がん細胞特有の細胞情報に応答し、正常細胞には副作用を発現しないがん細胞特異的遺伝子治療薬の創製や、細胞内で標的酵素活性をin situで蛍光検出を可能とする分割型緑色タンパク質(GFP)の開発、リボスイッチなどダイナミックな高次構造変化を観測可能な時間分解円二色性スペクトル測定装置の開発、さらにはタンパク質などを不斉反応場とする超分子不斉光化学などを有機化学から物理化学、そして生命化学分野まで幅広い研究を展開しています。
(324字)

英語タイトル:
Design and Synthesis of Artificial Nucleic Acid and Non-natural Protein for Active Control of Cellular Function and Development of CD Measurement System with High Sensitive & High Time Resolution(29 Words; 167 Characters)

英語紹介文:
A chemical synthesis and modification of DNA/RNA and protein is the fundamental technology and science that has led the molecular biology revolution. Hence, a chemistry of DNA/RNA and protein not only in vitro but also in vivo expects to open new generational stage of bioorganic chemistry and molecular biology. Thus, focusing our research interest mostly on the recognition and complexation behavior control of biopolymers, such as DNA/RNA, proteins by external factors, toward the active control of cellular functions.
Another topics are reaction control based on molecular recognition phenomena in both ground and electronically excited states; we are pursuing mechanistic and synthetic studies on asymmetric photochemistry with supramolecular biopolymers as chiral reaction fields.
(108 Words; 647 Characters)

福島大学 共生システム理工学類

金澤研究室

 研究は主に,ポリペプチドの合成,不活性高分子材料の表面処理、選択的吸着繊維の設計、および染料化学に関する領域の研究を行なっている。具体的には以下のような内容である。
(1)ポリペプチドの合成:アミノ酸N−カルボキシ無水物(NCA)の単結晶を作り,その結晶構造のX線解析を行ない,その結晶状態での重合(固相重合)と,従来の溶液重合と比較する。これまでと異なり,溶液重合が不活性である一方で,多くのアミノ酸NCAの固相重合が活性であることを見出した。当該研究者自身の約30年間のデータも含めて,多くの報告の見直しを行っている。なお,アミノ酸NCAの結晶構造は全て,金澤が決定し,10数種について,国際結晶学会のデータに登録されている。また,最近,分子量分布のせまいポリペプチドの合成が可能となった。
(2)不活性高分子材料の機能化:ポリプロピレン,ポリエチレンなどのポリオレフィン,ポリエステル,その他の高分子材料等の表面処理による性質の改良,特に吸水性,染色性,接着性などを改良し,新たな応用の展開を行っている。
(3)吸着の問題:各種材料の吸着特性・分子認識能・選択的吸着材料等を設計し,実用化を行っている。水中で界面活性剤(アニオン、カチオン、非イオン)、アンモニウムイオン、各種の有機溶剤を吸着する材料を作った。さらに、地域の災害のために、放射性セシウムの吸着にも取り組んでいる。
(4)染料の化学:染料の酸化分解機構の解明,未解決の基本的問題(水,濃度などに関わる)、色素の錯体形成などを検討する。難染色性であるポリプロピレン、高分子量ポリエチレンの染色を行っている。
◆主な研究設備:GCMS,FTIR,DSC,TGA,GC,LC(GPC,アミノ酸,イオン分析などに改造),SEM,UV,GPC,単結晶IP型X線回折装置,各種顕微鏡,接触角測定装置など。


日本大学 工学部物質化学工学科

〜佐藤研究室〜

 当研究室は物質化学工学科の13研究室の一つとして,新規性ポリマーの合成,重合反応や熱的評価などに重点をおいて活動している。

()ジビニル化合物の環化重合および共重合:ジビニル化合物,トリエンを対象にして,ラジカル付加による環化重合や汎用性ビニルモノマーとの共重合を取り扱い,反応制御の観点から,モノマーの反応性を評価したり,重合反応挙動の解明に取り組んでいる。一方,コモノマーに二酸化硫黄を用いた新規性ポリスルホンの合成に関しては高分子の分子設計と耐熱性評価の立場から重合体の光分解性や熱的性質の検討を行っている。

()アミノキノン系ポリマーの合成:ポリマーに耐熱性や導電性を付与することを意図して芳香族ポリアミノキノン及びその誘導体を溶液重縮合反応により合成している。2,5-2,6-p-ベンゾキノンおよびクロラニルなど塩素置換キノンを一成分とし,脂肪族,芳香族ジアミンなどを用いて溶液および界面重縮合によりポリアミノキノンを合成し,これらのポリマーの熱的評価を行っている。また,芳香族ジアミノカルボン酸からポリアミノキノン前駆体を経て脱水環化反応によりポリキナクリドンキノンを誘導し,耐熱性を評価した。

()N-アシル化アルキルアクリルアミド類の重合反応:各種のN-アシル化基を導入したアルキルアクリルアミドモノマーを新規に合成し,そのラジカル重合を行い,標記モノマーの構造と反応性について調べている。

◆主な研究設備:GPCIRUVDSCDSC-TGAなど。


福島工業高等専門学校 物質工学科

〜井上研究室〜

 福島高専は多数の化学工業(クレハ,日本化成,有機合成薬品,城北化学など)が存在するいわき市にあり,本科5学科(機械工学科,電気工学科,物質工学科,建設環境工学科,コミュニケーション情報学科)と専攻科3専攻(機械・電気システム工学専攻,物質・環境システム工学専攻,ビジネスコミュニケーション学専攻)からなっている。

 井上研究室では重縮合反応による高性能高分子の合成とヒドロキシル基の反応性を利用した機能性高分子の合成を中心に次のプロジェクトで教育の傍ら研究を進めている。

(1)ヒドロキシル基を含む芳香族ポリアミド,ポリイミドなど重縮合系高分子の合成

(2)複合材料の研究(豊橋技科大との共同研究)

(3)感光性高分子の合成(福島県ハイテクプラザとの共同研究)

(4)低誘電率ポリアミドおよびポリイミドの開発

(5)スチルベン構造,トラン構造を含む高性能高分子の合成と応用

◆主な研究設備:熱分析装置(TGDTA, DSC, TMA, FTIR, HPLCなど。


福島工業高等専門学校 物質工学科

〜梅澤研究室〜

 現在、本研究室には専攻科1年生2名、本科5年生3名の計5名が在籍しており、以下のテーマで研究を行っている。
(1) 高性能新規有機イオン性2次非線形光学材料の開発と評価
新規なDA型の分子、特にアクセプター部にカチオンを導入した有機イオン種の合成と光学特性の評価を行っている。
(2) 対イオンの変換による非中心対称構造結晶の探索
合成した材料の応用のためには、結晶の非中心対称化、さらには結晶構造の最適化が必要となる。そこで、対イオンを変換することにより最適化された構造をもつ単結晶の探索を行っている。対イオンとしては従来行われている、ベンゼンスルホン酸誘導体などの一価のイオンだけでなく、二価のイオンについても検討している。


 八戸工業高等専門学校 物質工学科
 

〜佐藤研究室〜

研究内容
「ポリオキサゾリンとトリアジンチオールによる機能性材料の開発」を中心に行っています。オキサゾリンの特色としては、カチオン開環重合により分子量がほぼ単分散である、末端に活性生長種を有するリビングポリオキサゾリンとなり、様々な化合物と反応することによりテレケリックスとなる、などが挙げられ、本研究室では長年ポリオキサゾリンに関する研究を幅広く行ってきました。ポリオキサゾリンもトリアジンチオール類もともに有用性が高いため、それぞれの特色を活用することにより、あるいは無機層状化合物と複合することにより、新規な機能をもつ高分子材料ならびに有機/無機複合材料の開発が可能と考えられ、これを用いた新規材料の開発および既存材料の改質に関する研究を行っています。
研究テーマ
1)プラスチック表面の改質
 ポリ塩化ビニルを親水性テレケリックスによりグラフト化して改質することを検討してきました。同様に、親水性テレケリックスによるグラフトで、疎水性であるポリスチレンの改質も行えるものと考え、研究を行っています。
2)金属表面の改質
疎水性のテレケリックスによる銅板表面の改質を行い、化学吸着による被膜の生成状態および形成機構を明らかにした結果、金属と異種材料との接着剤やプライマーになり得る可能性を見いだしました。現在、電子情報機器内部のプリント配線板回路作成法として主に用いられているウェットエッチング法における、銅とエッチング液との濡れ性を向上させることなどの応用を目的に、親水性テレケリックスを新規の金属表面改質剤として開発することを目的として研究を行っています。
3)新規有機/無機複合材料の開発
青森県はホタテの生産地であり、毎年大量のホタテ貝殻が廃棄され、その処理が問題となっています。この地元の未利用資源について、様々な有効利用法が検討されている中で、ホタテ貝殻の抗菌作用に着目し、貝殻粉末をポリ塩化ビニル等のポリマーおよびポリオキサゾリンテレケリックスを用いてグラフト化したポリ塩化ビニルポリマーに高度分散させた、新規有機/無機複合体の合成と、抗菌性、親水性、および帯電性緩和等の物性評価を検討しています。また、テレケリックスの親水性ポリオキサゾリン部分でガラスと親和させ、トリアジンチオール部分で金属と親和させることによる新規異種材料接着剤の開発を目的に研究を行っています。

独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研)

東北センター

 産総研は「持続的発展可能な社会の実現」のための産業変革に向けて、経済産業政策との整合性を図りつつ、リスクの高い革新的技術シーズの創出と実効性のある研究成果の移転に取り組んでいます。特に産業技術分野では、省エネルギー、低環境負荷、資源循環型製造プロセス、非化石燃料エネルギー、安全・安心な社会基盤の構築など重点6分野での技術革新に総力を挙げて取り組むことで、我が国の中長期的な産業競争力の強化と新しい付加価値をもつ新産業の創出に貢献することを目指しています。

  その中で、産総研東北センターは、東北地域における研究拠点および連携拠点として、先端的な低環境負荷型化学プロセス分野におけるCOE化を目指すとともに、産学官連携活動の要としての役割を果たすことで、地域産業の活性化と新規産業の創出に貢献できるように、第一期中期計画の4年間でその基礎を築いてきました。そして、平成17年度からの第二期中期計画では、従来の研究ユニットであった「超臨界流体研究センター」と「メンブレン化学研究ラボ」を融合させて、新たに「コンパクト化学プロセス研究センター」を発足させ、環境負荷の小さい機能性材料の開発と環境負荷の少ない且つ省エネルギー型の化学プロセス技術の開発研究を集中的に実施しております。

 また、東北地域における産業振興と新産業創出に向けて、産学官が連携して技術移転の促進をはかることも産総研東北センターの大きな使命です。特に産業技術が高度化し、且つ短期間での開発・実用化が求められる今日、大学、公設研、産総研等の研究機関と経営支援機関、行政が連携を強化して、地域産業界に対する総合的な支援システムを構築することは極めて重要且つ緊急の課題となっています。産総研東北センターは、つくばセンターを含む各地域センターとの有機的なネットワークを活用して、地域の産業ニーズに迅速に応えるとともに、大学や公設研との連携も一層深めながら地域産学官連携活動を展開しています。

【コンパクト化学プロセス研究センター】

(ミッション)

 シンプルでコンパクトな化学プロセス技術を開発し、分散適量生産方式、物質循環システムの確立に資することをミッションとします。

(目 標)

 エネルギー使用を最小にし、しかも環境負荷物質の発生・放出を最小にする技術開発として超臨界流体技術と無機系膜技術の開発およびこれらの融合により新技術・新分野の創造・開拓・展開に取り組みます。さらに、これを踏まえ東北地域の大学・企業の有する電気・電子技術や微細機械金属加工技術等との融合を図ることにより、分散適量生産方式に適合する化学プロセスのコンパクト化技術の開発とその実用化に必要なエンジニアリング技術の開発・構築を目標とします。

(重点課題)

①分散型プロセス技術の開発、②分散型プロセスの工程管理技術の開発

(組織体制)

研究センター長:水上富士夫

副研究センター長:鈴木敏重

研究チーム(7チーム):コンパクトシステムエンジニアリングチーム、超臨界流体場反応チーム、触媒反応チーム、膜反応プロセスチーム、ナノ空間設計チーム、材料プロセッシングチーム、特異場制御計測チーム(板橋 記)


秋田県産業技術総合研究センター 工業技術センター

工業技術開発グループ

 秋田県では平成175月に工業技術センターと高度技術研究所との2機関の総務・企画部門の統合,研究部門の集合により,秋田県産業技術総合研究センターを設立しました。

 工業技術センターは,1927(昭和2)に工業試験場として設立して以来,1982(昭和57)に工業技術センターと改称し,現在地に新築・移転。企業支援を目的とした「研究開発」「技術相談・指導」を中心にし,企業との共同研究並びに設備・施設の開放などを実施しております。

 高度技術研究所は,1992(平成4)に本県独自の高度な技術基盤の構築を目的に設立し,「高密度垂直磁気記録の実用化」を研究テーマに,エレクトロニクス,メカトロニクス,新材料分野の研究開発並びに県内企業等の研究開発支援,人材育成等を実施しています。

現在,「秋田の強みを活かし,売れるものをつくる」を基軸とした戦略をもとに,マーケティングから研究開発,事業化までを一貫して取り組む「技術開発型売れるものづくり推進事業」を実施しております。具体的には,以下の4つの戦略的推進事業に取り組んでいます。

()垂直磁気記録:これまで培ったナノテク技術を結集し,製品・技術の世界への売り込み。

()ユビキタス:ますます小型化・高速化するモバイル通信機器に対応した電子デバイス製造技術の開発。

()輸送機:東北地方でも発展が見込まれる自動車産業,及び航空機産業への参入支援。

()医工連携:「医」のニーズと「工」のシーズを融合させ,メディカル関連産業の創出。

◆主要設備:電界放射型走査電子顕微鏡,熱分析装置,X線回折装置,ICP,原子吸光分析装置,FT-IR,ガスクロマトグラフ質量分析装置,ラピッドプロトタイピング,射出成形機,押出機,CAE(C-MOLD)など(工藤 記)


岩手県工業技術センター

材料技術部

 岩手県工業技術センター材料技術部では,鋳造,溶接・溶射,粉末冶金,表面処理,高分子加工,工業分析など幅広い技術分野で試験研究,技術支援,依頼試験を通じて県内中小企業の技術力向上に尽力している。しかし,高分子関係の研究テーマは職員の異動等により少なくなっている。現在は高分子薄膜形成等の表面処理技術に特化している。

 平成19年度の研究テーマは以下のとおりである。

()光学用金型への離型性付与技術の開発:微細複雑形状を有する金型表面に均一な有機ナノ薄膜を形成し,高度な離型機能を付与する技術を開発する。

()コールドスプレー法を用いる表面改質および複合化技術:金属、プラスチックなどの工業材料に、他の金属やセラミックス、有機材料等の粉末を低温高速で吹き付け、低表面エネルギーや耐食性、耐摩耗性などの表面改質や高温耐久性のある高性能材料を開発する。

()鋳鉄からの脱マンガン技術の開発:高マンガンの自動車用鋼材スクラップの脱マンガン・脱クロム技術を開発し,鋳造材料としてリサイクルを図る。

()廃棄サーメットを用いた鋳造複合材料の開発:廃棄サーメットを鋳鉄で鋳ぐるんだ複合材料を用いて、アルミニウムダイカスト用スリーブなどに使用される高温耐摩耗性材料を開発する。

◆主要設備:ESCA,オージェ,XMAFT-IR,エリプソメータ,熱分析装置(TG-MS),原子間力顕微鏡,蛍光X線,X線回折,ハイシェアキャピログラフ,PVT測定装置,射出成形機,二軸混練機,放電プラズマ焼結装置,真空蒸着装置,レーザー加工装置、コールドスプレー装置、疲労試験機など(鈴木 記)



宮城県産業技術総合センター

材料開発・分析技術部

 材料開発・分析技術部は機能材料開発班,材料応用技術班,分析評価班の3班で構成され,粉末成形,焼結,プラスチック材料,機械加工,超精密加工技術,精密測定,物性評価,各種分析の技術相談や技術支援,研究開発に取り組んでおります。 

 当部での主な研究開発テーマは以下の7テーマで,ポリマー関連としては生分解プラスチックの諸特性(生分解性,ガスバリア性,機械的特性など)向上に関する研究を行っております。※以下の()()が該当

()高精度形状・鏡面加工技術の実用化研究【県単】

()微細切削加工技術に関する研究【県単】

()バイオ生分解素材の実用化研究【県単】

()木質系バイオマスリグニンからPDCを経由した高機能性有機材料の開発【NEDO

()稲わらを活用した低コスト水田用マルチ資材の開発【農水省】

()有機材料中の重金属分析技術の開発

()定量的洗浄度評価技術を用いた低環境負荷水系洗浄技術に関する研究【県単】

◆関連設備:加工特性評価装置(ポリラボシステム),射出成形機,卓上成形機,分解型ニーダ,スクリーン式粉砕機,機械的特性評価試験機,ツインロックウェル硬さ試験機,引張圧縮試験機,分光測色計,微量水分計,XTV透視検査システム,走査型電子顕微鏡,低真空走査型電子顕微鏡,蛍光X線分析装置,フーリエ変換赤外分光装置,EPMA(電子線マイクロアナライザ),ガスクロマトグラフ,ICP,熱分析装置(DSCTG/DTATMA),三次元CADシステム,CAEシステム,光造形システム,紙積層造形装置,金属粉末積層装置


福島県ハイテクプラザ

コアセンター・研究開発部・材料技術グループ

 福島県は平成16年度に組織体制の見直しが図られグループ制がしかれた。しかし,県庁をはじめとして組織が分かりにくい,チェック機能が不十分などの指摘が寄せられたため,新年度から部課制に戻すこととなった。福島県ハイテクプラザも同様に平成2021年度にかけて組織が再編される予定である。ポリマーに関わるのは,研究開発部 工業材料科となる見通しである。担当する職員も変遷してきているが,今までどおりにお付き合いいただければ幸いである。

 福島県ハイテクプラザは,主に県内中小企業を対象として,技術相談,依頼試験,分析機器などの貸し出し,地域還元型の研究開発などを業務としている。最近の特徴としては,研究内容を県内企業に公募するタイプの研究開発も行っており,研究成果が実用化につながりやすいものに多く取り組むようになっている。

 ポリマーを含む有機化合物に関わる業務では,従来どおり有機化合物の分析,材料の物性評価,熱可塑性樹脂の成形加工などを行っている。現在取り組んでいる関連の研究開発テーマとしては以下のようなものがある。

○フェノール系有機資源の物質選択性を利用した高機能エコ製品の開発(平成1921年度)

内容:研究の大きな目標は,地域資源の活用ニーズに応えて,その工業的な環境対応型の活用方法を開拓して伝統産業や原料供給地としての活用化を図るというものである。具体的には,地域資源として漆,渋柿,タンニンなどの天然多価フェノールを扱い,これらについて金属表面の表面処理剤として活用し,防錆処理やプライマー処理としての活用を探ることと,同化合物を選択化合物の吸着機能材料として活用し,液体・気体中の分離フィルターとしての活用を探ることを行っている。

◆主要設備(有機材料関連):

○加工機関連:ラボプレス機,他

○物性測定関連:万能材料試験機(1t),二軸混練押出機,回転式レオメータ,キャピラリー式レオメータ,p--T特性測定装置,他

○分析関連:フーリエ変換赤外分光光度計,ラマン分光光度計,GC-MS/MSn分析計,LC-MS/MS分析計,紫外可視自記分光光度計,熱分析装置(TGDTADSCTMA)CHN-O元素分析装置,粒度分布・ゼータ電位測定装置,分光蛍光光度計,他

○その他:耐候試験機,超臨界抽出装置,凍結乾燥機,各種顕微鏡,他

※不明な点,詳細,これ以外の機器などについてはお尋ねください。(024-959-1737 材料技術グループ→工業材料科)

※その他,是非,URL http://www.fukushima-iri.go.jp/ をご覧ください。


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