平成11年度 岩手地区 夢化学−21 化学への招待 実施報告書


平成11年度 第68回 夢化学−21 化学への招待 東北地区ポスター

要 旨
 中学、高校生に化学に親しんでもらうため「夢化学-21・化学への招待」岩手大学化学実験一日体験教室を工学部応用分子化学科を会場として実施した。テーマは「生活と高分子」ということで、初めに「生活と高分子(便利さばかりが優先する)」という講演を、また講演終了後に「身の回りの高分子を調べてみよう(衣食住について)」という実験を行ない、高分子材料が身近な家庭用品に使用されていることを認識してもらった。 

実施スケジュール
平成11年7月24日() 9時30分から16時30分
会場:工学部応用分子化学科第3講義室、第2学生実験室
9:00
 受付開始 工学部応用分子化学科玄関
9:30
 開会挨拶 岩手大学工学部教授 佐藤 瀏
9:40
 講演 「生活と高分子」  講師 岩手大学教育学部教授 平佐興彦
10:40
 休憩
11:00
 実験 「身の回りの高分子を調べてみよう(衣食住について)
11:00
 実験1 「住」について(新建材とハウスシックネス)
12:15
 昼食
13:00
 実験2 「食」について(包装材とリサイクル)
14:30
 休憩
14:50
 実験3 「衣」について(繊維の種類と染色)
16:00
 解説、まとめ。アンケート記入
16:30 閉会

講演内容
講演「生活と高分子(便利さばかりが優先する)」は衣食住のために使用されている高分子(プラスチック)について紹介し、プラスチック製品の分別とリサイクルについて解説した講演であった。現在市販されているプラスチック製品はそのほとんどが石油化学製品である。これまでのように便利さを優先しプラスチック製品の使い捨てを続けて行けば、限りある石油資源の枯渇、廃棄物による環境の破壊等に結び付くことを解説し、プラスチック製品の分別リサイクルの重要性を説明した。また、現在行なわれているプラスチック製品のリサイクルの状況と今後の課題についても解説した。

実験内容
実験1 「住」について(新建材とハウスシックネス)
プリント合板に含まれるホルムアルデヒドを検出するため、計量したプリント合板を非イオン性界面活性剤の溶液に浸し、ホルムアルデヒドを抽出した。この抽出液に発色剤としてフロログルシノールを加え分光光度計で吸光度を求めた。あらかじめ作成しておいた検量線を用い、サンプルおよびブランクの吸光度の値から合板中のホルムアルデヒドの量を計算した。

実験2 「食」について(包装材とリサイクル)
市販の包装材に利用されているポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等を用い、これらの比重の違いおよび燃焼のしかたの違いを調べた。これらの性質の違いを基に未知試料について定性を行ない、この方法で分別できるものとできないものについて判定した。

実験3 「衣」について(繊維の種類と染色)
タンパク系繊維、セルロース系繊維、ナイロン繊維、アクリル系繊維、ポリエステル系繊維を用い酸性染料、分散染料に対する染色性の違いを確かめた。また、酸性染料と分散染料を混合し複数種の繊維サンプルを浸した場合、繊維と染料の相性により染色されるものとされないものがあること、繊維ごとに染色される色が異なることが観察された。

提 言
「夢化学-21・化学への招待」岩手大学化学実験一日体験教室は、これまで中学、高校が夏休みにはいる7月後半の土曜日に実施されており、例年50名を超える参加者が集まる行事として定着してきた。しかし、本年は参加者が30名と例年の6割程度であり、特に高校生の参加者が例年の半分程度しか無かった。各学校への案内は例年通り行ない、特に盛岡近郊の学校には再三参加を依頼したにもかかわらず参加者を集めることができなかった。高校生の参加者が少なかったのは、本年岩手県で開催された全国高校総体岩手大会の準備の時期と重なったためと考えられる。「夢化学-21・化学への招待」が本来高校生を対象にして行なわれていることを考えると非常に残念である。
 今回の「夢化学-21・化学への招待」は「身の回りの高分子を調べてみよう(衣食住について)」というテーマで行なわれたが、参加者は普段は意識しないで使っている日用品が高分子化合物であることをあらためて認識したようである。また、参加者各々が実際に実験することよって、実験することの楽しさを実感したようである。特にプラスチックの燃焼による塩素の検出実験や染料を用いた繊維の染色実験は手軽にでき、しかも目で見て結果がわかるので好評であった。結果的に実験補助のスタッフ一人当りが担当する参加者の数が少なくなったため、参加者全員が実験を楽しめたようある。

新聞記事・TV関係
 今回の行事については岩手日報に1ヶ月前に掲載していただいた。また、当日は岩手日報の取材があり、新聞の記事に実験の様子が掲載された。

参加高校生の意見
参加高校生の意見を要約すると以下の通りです。
(1)自分の進路の参考にしたい。
(2)自分で実験したり、大学の施設を見ることができいい体験をしたと思う。
(3)来年も参加してみたい。
(4)実験補助の人の説明が親切で楽しく実験できた。
(5)高分子が身の回りにたくさんあることがわかった。化学のイメージが変わった。
(6)化学は苦手だけど、おもしろかった。

参加教師の意見
 高等学校の先生の意見を要約すると以下の通りです。
(1)化学を履修していない生徒には難しかったかもしれない。
(2) 銅線上で塩化ビニルを燃やす炎色反応は高校でも取り入れたい教材である。

実験風景