平成10年度 岩手地区 夢化学−21 化学への招待 実施報告書 |
平成10年度 第59回 夢化学−21 化学への招待 東北地区ポスター |
要 旨 |
高校生に化学に親しんでもらうための啓蒙活動として、岩手大学で夢化学-21・化学への招待一日化学体験入学を実施した。テーマは「水をきれいにする」ということで午前中は「水の汚れと浄化」と「身の回りの吸着材料」についての講演を、また午後は家庭にある身近な吸着性材料で水をきれいにする実験を参加者全員に行ってもらい、化学のおもしろさを伝えることを目的とした。 |
実施スケジュール |
平成10年7月25日(土) 9時30分から16時30分 9:00 受付開始 工学部応用分子化学科玄関 9:30 開会挨拶 岩手大学工学部教授 久保田徳昭 (工学部5号館31番講義室) 9:40 講演氈@「水の汚れと浄化」 講師 岩手大学工学部助教授 梅津芳生 10:20 講演 「身の回りの吸着材料」講師 岩手大学工学部教授 成田榮一 11:10 休憩 11:20 実験の部 「身近な吸着材で水をきれいにしよう」(工学部5号館学生実験室) 11:20 実験1-A 11:50 昼食 13:10 実験1-B,実験2-A,2-B 14:40 休憩 14:50 実験3 16:00 解説、まとめ。アンケート記入 16:30 閉会 |
講演内容 |
講演氈u水の汚れと浄化」では水の必要性と水の性質を紹介し、浄化との関わりについての講演であった。水は生命を保つために必要であり、汚れた水とは人に害がある水のことであり、きれいな水にする事を「浄化する」と言うことの概説があった。水は物をよく溶かすため溶かされた物が人に害があれば「水が汚された」ともいえる。水の汚れの限度を飲料水と生活排水基準について関連して説明した。 講演「身の回りの吸着材料」では吸着性の材料について、その原理と種類の紹介があり水の浄化に利用した例の解説と家庭身の回りの材料を吸着の立場から探してみることの講演であった。吸着とはすいつくこと、固体や液体がその表面に気体の分子や溶液中の溶質の分子をすいつける現象である。吸着剤には無機質吸着剤と有機質吸着剤があり成分と原料から説明した。水の浄化には汚れ除去対象成分によって吸着剤が選定される。日常生活では脱臭剤、浄水器、紙おむつそして乾燥剤などに利用され、身の回りみにあるコーヒー豆かすは吸着性の強い材料であり、これを使って吸着実験を行う説明があった。 |
実験内容 |
実験1 吸着特性のテスト [A] 試験管に吸着性材料(シリカゲル、アルミナゲル、活性炭、イオン交換樹脂、木炭、コーヒー豆かす、紙オムツなど)を少量入れ、蒸留水を加える。この試験管に染料溶液(メチレンブルー(MB)、オレンジ(OR)、クリスタルバイオレット(CV))を1,2滴加え激しく振る。色の取れ具合いと吸着剤の着色程度から吸着特性を判断する。 [B] 試験管に蒸留水を入れ、これにCVを1,2滴と硫酸ドデシルナトリウム1,2滴を加え、よく振り泡を発生させその泡にCVが吸着して、水溶液が次第に無色になることを実験観察する。エタノールを滴下し泡を消失させ上層の紫色のCVの吸着層と下層の無色の水溶液を実験観察する。 実験2 水の浄化(陽イオンの除去) [A] 水中のアンモニウムイオンはネスラー試薬、鉄イオンはオルトフェナントロリン試薬によって溶液のどのように着色するかを観察する。 [B] アンモニウムイオン溶液と鉄イオン溶液の混合溶液をイオン交換樹脂の入ったカラムに注ぎ流下させ、その溶液にネスラー試薬またはオルトフェナントロリン試薬を加えどのように発色するか実験観察する。 実験3 染料の分離実験 コーヒー豆かすまたは家庭用漂白剤で漂白した豆かすをガラス製カラムに蒸留水と共に流し込み詰める。このカラムにMB溶液とOR溶液の混合溶液を注ぎ込み流下させ溶出液がオレンジ色になることを観察する。つぎに、蒸留水を注ぎ溶出液が無色であることを観察する。さらにエタノールを注ぎ溶出液が青色になることを実験観察する。 |
提 言 |
毎年 夢化学-21・化学への招待一日化学体験入学を行っているが、昨今の環境汚染、ダイオキシン問題など身近に化学を感じる機会が多くなり、今回のテーマも家庭にある身近な材料で水をきれいにしてみましょうと言うことで参加者も多く54名となった。高校生31名、一般11名、大学生7名、中学生3名、小学生2名と幅広く参加した。参加者各々が実際に実験し試験管、吸着性材料等を手で触り、現象を観察することによって、化学の楽しさに触れることができたと大変好評であった。コーヒー豆かすなど身近な材料が吸着剤として利用でき、化学が日常の生活と密接に関係していることを強く認識したようであった。岩手大学では2名グループで行う実験であったので実験内容も少ないと感じられるぐらいが余裕をもって行えたと思う。中学校、高校の授業でも実際に行う実験の機会を増やす必要があると思うが、今回の実験では教官10名 助手は学生10名に協力を得ることができスムーズに行うことができたが、中学校、高校の授業でのスタッフの数の問題が出てくると思う。このような機会を大学が開催し、化学に興味を持たせることができれば社会に貢献することは多大であると思う。なお、当日昼食会を設け参加者の懇親の場として懇談することは大変有意義のことであった思われる。 |
新聞記事・TV関係 |
今回の行事については盛岡市公報に1ヶ月前に掲載していただき、盛岡タウン誌マシェリにも掲載していただいた。またIBCラジオの番組でも紹介してもらった。 当日はNHK盛岡放送局の取材があり、昼のニュースで講演の様子が放送された。 |
参加高校生の意見 |
参加高校生の意見を要約すると以下の通りです。 (1)学校ではやらない実験がたくさんできてよかった。 (2)参加して今までより化学に興味が持てた。これからも化学にかかわって行くのでがんばりたいと思う。 (3)自由実験でも色々試すことができていい体験をしたと思う。実験が楽しいと思え、参加してよかった。 (4)来年も参加してみたい。 (5)講師の方の話が分かりやすく楽しく話してくれたので面白くとても興味深い講演であった。とても明るく楽しい先生方が沢山いたのでとても安心して実験ができた。 (6)パンフレットを見て難しそうと思えたが、講演は思ったよりわかりやすかった。 (7)化学の基礎知識の有無を超えて皆楽しみ、その中でいつのまにかに化学的知識を得られたのではないかと思う |
参加教師の意見 |
高等学校の先生の意見を要約すると以下の通りです。 (1)環境問題が色々話題にされている今、今回のような講演実験わとても興味深く感じた確実に身の回りで環境問題は進んでいると思われる。そんなことをあらためて考えるきっかけになってよかったと思う。 (2) このような場がもっとあってほしい。 (3) 今後も継続されることを望みます。 |
実験風景 |