はじめに
1-1 序論
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」に基づく分類では、廃棄物は「一般廃棄物」「「特別管理一般廃棄物」「産業廃棄物」「特別管理産業廃棄物」の4種類に分類されるが、教育研究を行う大学は「事業所」であるため、大学から出される廃棄物は下記の一般廃棄物や特別管理一般廃棄物に相当するものも含めてすべて「産業廃棄物」または「特別管理産業廃棄物 」として、また一部は事業系一般廃棄物として取り扱われる。従って大学から出される廃棄物については特に厳密な分別回収・処理を行うことが必要となる。
<廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)に基づく分類>
(1) 一般廃棄物:産業廃棄物以外の廃棄物
紙くず、厨芥等
(2) 特別管理一般廃棄物:一般廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして政令で定めるもの
廃エアコン、廃テレビ、廃電子レンジ等に含まれるPCB使用部品、感染性廃棄物のうちの臓器・組織・動物死体・脱脂綿・ガ−ゼ・包帯等
(3) 産業廃棄物:事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃えがら、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定めるもの
燃えがら、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類等ゴムくず、金属くず、ガラス及び陶磁器くず等、試薬等を使用した実験器具等、廃試薬容器等
(4) 特別管理産業廃棄物:産業廃棄物のうち、爆発性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして政令で定めるもの
1. 廃油(揮発油類、灯油類、軽油類)
2. 廃酸(水素イオン濃度指数(pH)が2.0以下の廃酸)
3. 廃アルカリ(水素イオン濃度指数(pH)が12.5以上の廃アルカリ)
4. 感染性廃棄物(感染性病原体が含まれ、若しくは付着している廃棄物又はこれらのおそれのある廃棄物)
5. 廃PCB等(廃PCB及びPCBを含む廃油)
6. PCB汚染物(紙くず、廃プラスチック類又は金属くず)
7. 重金属類等を含む有害産業廃棄物(カドミウム、鉛、六価クロム又はヒ素を厚生省令で定められた基準以上に含むばいじん、燃え殻及び水銀、カドミウム、鉛、有機リン、六価クロム、ヒ素、シアン化合物又はPCBを厚生省令で定められた基準以上に含む汚泥、廃酸、廃アルカリ等)
8. トリクロロエチレン等を含む有害産業廃棄物(トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,3-ジクロロプロペン、チウラム、シマジン、チオベンカルブ、ベンゼン又はセレンを厚生省で定められた基準以上に含む汚泥、廃酸、廃アルカリ、廃油等)
9. その他爆発性、毒性を有し、人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する産業廃棄物
1-2 廃液の区分
岩手大学では研究や学生実験で発生する廃液を処理の関係から無機系廃液・有機系廃液の2種類に大別し、さらに分類手順に従って細かく分類する。これらの方法で分類した後、無機系廃液・有機系廃液はすべて業者に処理処分を委託する。実験廃液の区分は図1に示す通りである。
実験室で発生した廃液はその内容をよく知っている実験者本人が適正な分別を行うことにより初めて廃液として出すことができる。この初期分別がいい加減だったり分類区分の異なるタンクに水銀などの重金属が混入したりすると後の処理が極めて困難になり処理費用の大幅な増大や排水基準を超過する危険を招いたりもするので、廃液の分類には十分注意する必要がある。特に特別管理産業廃棄物として指定されている毒性の高い無機・有機化合物を含む廃液を貯留する際には、タンクごとにどのような廃液を誰がいつどれだけ投入したのかの回収履歴を必ず記録しなければならない。
有機系・無機系廃液に共通することであるが、以下の点に十分に留意しながら廃液の貯留と回収を行って欲しい。
(1) 回収容器には割れやヒビのないものを用いる。
(2) 容器のふたに割れやヒビがなくしっかり閉まるものを用いる。
(3) 廃液の分類が正しいかどうかを常時チェックする。
(4) 廃液タンク内での沈殿や異物の混入を極力防ぐ。
(5) 廃液回収用ポリタンクの一つ一つについて回収履歴を記録する。
(6) 水銀塩等の毒劇物を含む廃液も「有害物質」であり、毒劇物と同等の取扱・保管・移転記録の保持が必要となる。
(7) 有機系廃液は消防法の適用対象でもあることに注意し、有機系廃液の保管には施錠可能で換気装置と消火装置の設置された廃液保管庫等を用いる。
(8) 廃液回収時には無機系廃液回収ポリタンクには無機系廃液内容物カード1枚、有機系廃液回収ポリタンクには有機系廃液内容物カード1枚をポリタンクの胴体側面の目立つ場所に貼り付ける。
(9) 無機系廃液回収時には廃液に「無機系廃液送付書」を、有機系廃液回収時には廃液に「有機系廃液送付書」を添付し所定の場所に送付する。
図1 廃液の分別表
<岩手大学環境保全委員会発行の「岩手大学 実験廃液マニュアル 第1版」について>
「岩手大学 実験廃液マニュアル 第1版」は岩手大学環境保全委員会が平成15年12月に作成し平成16年3月に岩手大学の化学系教職員に無料で配布した冊子であり、その中では教育研究活動を安全に進めていくために書かせない有機無機廃液の分別と回収に関する注意事項が細かく記載されている。本冊子の内容に関する問い合わせや取り寄せの希望等は下記の部署で取り扱っている。
〒020-8551 岩手県盛岡市上田3丁目18-8 岩手大学財務部施設課機械係(TEL 019-621-6046, e-mail: kikai@iwate-u.ac.jp)