危険物に関する法律

 本章では主に危険物の管理に関する注意事項を記述する都合上、『消防法』『高圧ガス保安法』及び『火薬類取締法』についてその概略を述べる。

(1) 『消防法』の概略

 化学物質の中には『消防法』に該当する薬品が数多く含まれる。実験室で用いる化学物質が『消防法』のどの分類に該当するのかを予め知っておかないと、保管や使用の際に発火または引火して火災の原因となったり思わぬ爆発を起こしたりすることがある。このような事が起こらないように『消防法』に該当する薬品には、各社共、容器又は容器に貼ってあるラベルに消防法の「品名」・「危険等級」・「注意事項」等を記載することが義務づけられている。化学物質を使用する際には事前にこれらを確認した上で、十分に注意して試薬を取り扱って欲しい。

 特に有機溶剤類は『消防法』により実験室に保管できる量が規制されている。従って必要最小限の量以外は指定された「危険物薬品庫」に貯蔵し、必要量だけを実験室に運び込むべきである。危険物の分類と指定数量等に関しては 別表3.1 を参照のこと。

【第一種危険物】

 酸化性物質で、物質自身は発火性はないが、加熱すると分解して酸素を放出し、可燃性物質の燃焼を助けるもの。この分解は発熱反応であるため、酸化性物質と可燃物との混合は危険である。同じ場所に並べて置くのも好ましくない。また、ほとんどの酸化性物質は硫酸のような酸と混合すると爆発を起こす。

【第二種危険物】

 着火しやすく、よく燃える固体。これらのうち、たとえば硫黄は非常に着火しやすく、いったん火が着くと容易に燃え広がり、しかも燃焼生成ガスは有毒である。

【第三種危険物】

 空気中で自然に発火する物質、および水にあうと発火したり引火性のガスを出すものがこの類に属する。前者の代表が黄リンやアルキルアルミニウムであり、後者の例がカリウム、ナトリウムである。

【第四種危険物】

 石油類をはじめとする引火性、可燃性液体がこの類に属する。実験室内にはこの類の危険物の貯蔵が最も多い。着火の容易さの指標である引火点などによってさらに細かく分類されているが、一般に非常に着火しやすく、また燃焼も激しい物質なので、事故の際は大きな災害になる可能性が高い。

【第五種危険物】

 この類の危険物は不安定で加熱・衝撃等によって容易に発火・爆発する。特に有機過酸化物は可燃性と酸化性物質の両方の性質を持っており、取扱いには注意が必要である。

【第六種危険物】

 液体の酸化性物質で、危険性は第1類危険物と同様である。

(2) 『高圧ガス保安法』の概略

 『高圧ガス保安法』は高圧ガスによる災害を防止するため、高圧ガスの製造、貯蔵、販売、輸入、移動、消費、廃棄等を規制している。高圧ガスを内部にため込む容器には技術基準を満足させることを義務付けており、内部の圧力に十分な強度を有し、漏れのな

いことを証明できる容器にのみ内部に高圧ガスを入れることを許可している。本法による規制の概要は以下の通りである。

 対象品目:高圧ガス、容器及び高圧ガス製造設備

 規制の概要

  いずれの検査においても、外国検査データを可能な限り受入れ、検査の簡素化を図っている。また、検査の基準はいずれも法令等に明確に定められている。高圧ガスの輸入に当たっては、輸入高圧ガス明細書(圧力、成分、製造所を明記したもの)と現物との比較により、ガスの種類等の確認及び、その容器の技術基準適合性についての検査を行う。容器の輸入に当たっては、容器の技術基準適合性の検査を行う。なお、「登録容器等製造業者」は、公的機関が行う検査に替え、自主検査を行うことが認められている)。 特定設備の輸入に当たっては、高圧ガス設備の技術基準適合性の検査を行う。なお、「登録特定設備製造業者」は、公的機関が行う検査に替え、自主検査を行うことが認められている。エアゾール等の輸入に当たっては、輸入時に高圧ガス保安法の適用除外の要件に合致するかどうかの確認を試験成績書(当該製品の製造者が実施したものも可)により行う。なお、「登録製造業者」(登録容器等製造業者、登録特定設備製造業者)とは、製造設備や検査設備、品質管理体制などについての適合性調査を受け、経済産業省に登録された製造業者をいう。

(3) 『火薬類取締法』の概略

 火薬類の製造・販売・貯蔵・運搬・消費・その他の取扱を規制することにより、火薬類による災害を防止し、公共の安全を確保するのがこの法律の目的である。 従って火薬類の製造を営むものは、製造所ごとに経済産業大臣の許可を受けなければならない。また、火薬類の販売を営むものは、販売所ごとに都道府県知事の許可が必要である。火薬庫を設置、移転等を行う者や火薬類を譲り渡し、又は譲り受けようとする者は都道府県知事の許可を受けなければならない。火薬類を爆発させ又は燃焼させようとする者や火薬類を廃棄しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。本法による規制の概要は以下の通りである。

 対象品目:火薬類 

  i . 火薬(黒色火薬その他硝酸塩を主とする火薬等)

  ii . 爆薬(雷こう、アジ化鉛その他起爆薬等)

  iii . 火工品(工業雷管、電気雷管、銃用雷管及び信号雷管等)

 規制の概要

  火薬類を輸入しようとする者は、輸入火薬類の種類・数量、輸入目的、及び貯蔵又は保管場所等を記した火薬類輸入申請書に、火薬又は爆薬にあってはその成分及び配合比、火工品にあってはその構造及び組成を記載した書類を添えて、陸揚地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。

<補足説明>

(1) 「高圧ガス」

 「高圧ガス」とは、高圧ガス保安法によって次のように定められているガスである。その詳細は本冊子の第4章に記述されている。

(a) 常用の温度において圧力が 1 メガパスカル(MPa)以上となる圧縮ガスであって現にその圧力が 1 MPa 以上であるもの又は 35 ℃において圧力が 1 MPa 以上となる圧縮ガス

(b) 常用の温度において圧力が 0.2 MPa 以上となる圧縮アセチレンガスであって現にその圧力が 0.2 MPa 以上であるもの又は15℃において圧力が 0.2 MPa 以上となる圧縮アセチレンガス

(c) 常用の温度において圧力が 0.2 MPa 以上となる液化ガスであって現にその圧力が 0.2 MPa 以上であるもの又は圧力が 0.2 MPa となる場合の温度が 35℃以下である液化ガス

(d) 前号に掲げるものを除くほか、35℃において 0 MPaを超える液化ガスのうち、政令(高圧ガス保安法施行令第1条)で定めるもの

(1) 液化シアン化水素

(2) 液化ブロムメチル

(3) 液化酸化エチレン

 以上のように高圧ガスとは一定の圧力以上のものをいう。

<岩手大学工学部発行の「安全マニュアル 第2版」について>

 以上の注意事項は岩手大学工学部が平成15年3月に発行した「安全マニュアル 第2版」の中から関連する部分を抜粋したものである。ちなみに「安全マニュアル 第2版」は平成15年4月より岩手大学工学部の全教職員・在校生・新入生全員に無料で配布されている冊子であり、教育研究活動を安全に進めていくための研究分野ごとの注意事項が細かく記載されている。本冊子の内容に関する問い合わせや取り寄せの希望等は下記の部署で取り扱っている。

〒020-8551 岩手県盛岡市上田4丁目3-5 岩手大学工学部総務係(TEL 019-621-6304 FAX 019-621-6312)