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是永講義関連
                           

混成軌道の存在をどう考えるか

講義で解説したように、炭素の電子配置(1s22s22px12py12pz0)から考えると原子価は2となってしまうが、実際の原子価は4であり、メタンは正四面体構造(全てのC-H結合の長さ、エネルギーが同じ)となる。これを説明するために、1931年にポーリングによって提案されたのが原子オービタルの混成という概念である。

講義プリントで配布した下記のsp混成の形成図を見てしまうと、「混成軌道の出来るメカニズムはどのようであるのか」などという様に、実際にこのようにして軌道が作られるように考えてしまうかもしれない。


しかし、これは化学結合の方向性を説明するために原子軌道関数を数学的に線形結合する操作を表しているのに過ぎない。
つまり混成という考え方は、分子を原子の原子軌道(sとかpとかのAO)を組み合わせることにより、分子の形体をなるべく単純な理論でうまく説明するために人為的に導入されたものであり、軌道の混ぜあわせの現象が実際に起こっているわけではない。あくまで数学の世界の概念として存在している。

すなわち、混成は共鳴(両方とも原子価結合法の重要概念)と同じく、現象でも力でも無く、分子を説明するための道具と解釈して下さい。







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